近年では、ファッションの一環でワンポイントタトゥーを楽しむ方も増えていますが、日本では抵抗感を持つ方も多く、公共施設の利用には制限が設けられています。

また、タトゥーがあると生命保険の加入が難しくなる場合があります。すべての保険に加入できないわけではありませんが、その判断は保険会社で異なるため、事前の確認が必要です。

なかには「タトゥーを隠して保険に加入してもバレなければ平気では?」と考える方もいるかもしれません。

しかしながら、保険金や給付金の支払いに影響が出る可能性が高いうえに、最悪の場合は保険契約の強制解除や契約取り消しなどの取り返しのつかない事態になる可能性もあるため、タトゥーを隠して保険に加入するのは絶対にやめてください。

タトゥーで生命保険の加入が難しくなる理由や、タトゥーのある方が生命保険に加入するための方法について解説します。

タトゥーで生命保険の加入が難しくなる理由

冒頭でもお伝えしたとおり、タトゥーがあると生命保険の加入が難しくなる場合があります。その理由として以下の2点が挙げられます。

タトゥーで生命保険の加入が難しくなる理由
  • 反社会的勢力との繋がりを想起させる
  • 感染症など医学的リスクが指摘されている

反社会的勢力との繋がりを想起させる

やくざが背中に施す和彫りの入れ墨や任侠映画などの影響から、「入れ墨=反社会勢力」といったイメージが世間一般に浸透しています。

日本ではタトゥーに対する社会的な印象が根強く残っており、特に反社会的勢力との繋がりを想起させるケースも少なくありません。

生命保険会社は、保険金の不正請求や詐欺などのモラルリスクを防ぐ観点で、保険加入時の告知事項にタトゥーの有無を含む場合があります。

また、生命保険協会は反社会的勢力との関係を一切持たないことを方針として掲げており、保険会社もそれに従って審査を行っています。

たとえば、生命保険協会では、反社会的勢力への対応として「生命保険業界における反社会的勢力への対応指針」を策定しています。

生命保険業界における反社会的勢力への対応指針
  • 組織としての対応:倫理規程、行動規範、社内規則等に明文の根拠を設け、担当者や担当部署だけに任せずに、組織全体として対応する。
  • 外部専門機関との連携:反社会的勢力への対応に備え、平素より、警察、暴力追放運動推進センター、弁護士等の外部専門機関との緊密な連携を行う。
  • 取引を含めた一切の関係遮断:反社会的勢力とは一切の関係をもたない。また、反社会的勢力による不当要求には応じない。なお、他社(信販会社等)との提携によって融資取引等を実施する場合も同様とする。
  • 有事における民事と刑事の法的対応:反社会的勢力による不当要求に対しては、民事と刑事の両面から法的対応を行う。
  • 裏取引や資金提供の禁止:事実を隠ぺいするための裏取引は、絶対に行わない。また、反社会的勢力への資金提供は、絶対に行わない。

参照:反社会的勢力への対応|一般社団法人 生命保険協会

タトゥーがあるからといって必ずしも生命保険に加入できないわけではありませんが、反社会的勢力との関係が疑われれば、保険会社から保険加入を断られる可能性が高くなります。

感染症など医学的リスクが指摘されている

タトゥーには、感染症やアレルギーなどの健康リスクがあるとされ、生命保険の加入審査に影響を及ぼす要因のひとつになっています。

たとえば、入れ墨やタトゥーの施術時に使われる針や器具が使い回されている場合、血液を介した感染症のリスクが高まります。

血液感染の代表的な病気
  • B型肝炎
  • C型肝炎
  • ヒト免疫不全ウイルス(HIV)など

また、タトゥーのインクに含まれる金属成分によってアレルギーや皮膚疾患を引き起こす可能性も指摘されており、身体への長期的な影響も懸念されています。

日本赤十字社を例に挙げると、6カ月以内に入れ墨を入れた場合は肝炎などのウイルス感染の可能性が否定できないため、献血を避けるように明記しています。

生命保険は、加入者全員が公平にリスクを分担する「相互扶助」の仕組みで成立しており、健康リスクが高いと判断される方の受け入れは、制度全体のバランスを崩す要因となります。

そのため、保険会社は加入時の告知事項にタトゥーに関する項目を含む場合があり、タトゥーがある場合は通常よりも厳しい審査となる可能性があります。

タトゥーを隠して生命保険に加入するのはNG

タトゥーがある場合、それを隠して生命保険に加入するのは絶対にやめましょう。

先述のとおり、生命保険に加入する際は「告知義務」があり、契約時に健康状態や体に関する情報を保険会社に正しく申告する義務が課せられます。

タトゥーに限らず、過去の病気や通院歴、喫煙の有無など、告知すべき内容を意図的に隠すと「告知義務違反」に該当し、虚偽の申告や申告漏れがあると、保険金が支払われなかったり、保険契約そのものを取り消されたりするリスクがあります。

告知違反による主なリスク
  • 保険金・給付金の不支払い
  • 契約の取消・解除
  • 将来的な審査への悪影響

結果的に保険金が支払われないだけでなく、保険契約自体が無効と判断されることもあります。

こうした事態を避けるためにも、生命保険に加入する際はありのままの情報を正確に伝えることが大切です。

事前告知でタトゥーについて正確に伝える

保険加入時の事前告知の際は、告知事項にタトゥーに関する項目が含まれていなかったとしても、自己申告するのがおすすめです。

保険会社へのタトゥーに関する告知例
  • タトゥーを入れた時期
  • 施術した場所(医療機関・サロンなど)
  • 入れている部位や大きさ
  • 感染症の検査歴の有無 など

これらを報告したからと言って必ずしも保険加入が認められるわけではありませんが、条件付きで保険契約が認められる可能性が高くなります。

告知義務違反に該当すると保険金が支払われないばかりか、保険契約そのものが無効になってしまう場合があるため、万一のトラブルを避ける意味でもタトゥーについて正確に報告することを意識しましょう。

また、タトゥーがある場合はオンラインなどの非対面で申し込むより、担当者と対面しての申し込みを検討するのもおすすめです。